三代目表具職人の晩酌のおともは思い出の味「砂肝の煮付け」

仕事やモノづくりへのこだわりと同じく、食にも独自のこだわりを持つ職人をフィーチャーする「職人めし」。

第15回目の今回は、愛知県岡崎市にある「三晃堂表具店」の大高一晃さんに、日本画や書を“完成”させるために不可欠な表具についてのお話と、母親から受け継いだという「晩酌のおとも」についてお話をお伺いしました。

「三晃堂表具店」の三代目・大高一晃さん

岡崎城の向かい側、伊賀川にかかる龍城橋のたもとにあるのが三晃堂表具店。書や絵画に紙や布を貼って掛軸や巻物などに仕立てる「表具(表装)」の仕事を家業とする、この地で三代続く表具店です。

大高さん 書や日本画は描いたままの状態ではしわがよってしまうため、そのまま飾ることができません。このため、裏打ちをしてしわをきれいに伸ばし、それを表装や額装をするということが出来ます。表具を通じて、書画は初めて完成するといえます。

表具の技術の中心は「紙を貼る」というもの。この技術は応用範囲が広く、屏風やふすま、障子などの張り替えなども表具店の仕事になるそうです。

大高さん 子供の頃は社宅のふすまの張り替えの仕事が多く、一日に何十本と手伝わされていた。正直、面倒くさかったですよ。

子供の頃から身近に表具の仕事があった大高さんは、高校を卒業してすぐ表具師の道を歩み始めます。ちょうど進路を選択する頃、三晃堂表具店が面する道路が拡幅されることになり、お店を建て替えることになって「頑張らないと」と思ったそうです。

また、表具の仕事の一つとして古い書や絵画の修繕も手がけることがあるとのこと。京都の表具店での修行時代には国宝級の仕事も手がけられていたとのそうです。「展覧会に行かなくても間近で作品を見られるのが、表具師の仕事のいいところですね」と大高さんは話していました。

書画を作品として完成させるために、地道な作業を繰り返す

表具の仕事は書や絵画に裏打ちをして干す、それが乾いたらまた裏打ちとして干すという地道な作業の繰り返し。これを、およそ1ヶ月繰り返してようやく一つの表具が完成します。

この時に気を使うのが「とにかく汚さない」ということ。お客様から預かった一点物の作品ですので、作品を損なわないよう細心の注意が必要となるそうです。

和紙に墨で描かれる書や日本画は、糊を使う際に「にじみ」が出てしまう場合があるため、打ち刷毛、なで刷毛などの様々な刷毛を使い分けながら慎重に裏打ちを進めます。

また、同じ作品であってもどのように表装するかによって印象がガラッと変わってしまうそうです。このため、依頼を受ける際には予算や表装する作品はもちろんのこと、表装した書画をどこに展示するかも確認することが大切だといいます。

大高さん やってみなければ分からないところがあるのですが、その中でも「任せて良かった」と言ってもらえるとうれしいですね。

定休日は設けているものの、展覧会への搬入出があったり、飲食店などからの急なふすまの張り替え依頼などが入ってきたりることもあるため「休みはあるようでない」と話す大高さん。それでも、休みが取れた時には遠出することもあるそうです。

大高さん 京都での修業時代はアメフトが好きで、甲子園ボウルやライスボウルなどの大きな大会への観戦にも出かけていました。また、昔からモータースポーツが好きで、今でもサーキットまで観戦に出かけることもあります。

三晃堂表具店がある岡崎はF1で活躍した中嶋悟・一貴親子をはじめとした多くのトップレーサーの出身地。そんなモータースポーツとの縁が深い岡崎で生まれ育った大高さんご自身もバイクに乗られるという、同じように駆り立てられるものがあるのでしょう。

晩酌のお供にするのは、母親から受け継いだ「砂肝の煮付け」

「昔から家呑み派なんです」と話す大高さん。一日の締めくくりの晩酌が、日々の仕事の疲れを癒しだそうです。

そんな大高さんがよく作るとおつまみが「砂肝の煮付け」とのこと。砂肝というと焼いたり炒めたりする事が多いのですが、煮付けにする理由を大高さんはこう話してくれました。

大高さん 煮付けならつきっきりにならなくてもいいので、仕事の合間で作れるんです。一度にたっぷりと作って数日に分けて食べます。

大高さんにとって晩酌の名パートナーである「砂肝の煮付け」。普段は奥様に料理を任せている大高さんだが、この「砂肝の煮付け」だけはご自身で作られるそうです。その理由は、大高さんの母親との思い出にありました。

大高さん 昔は修行中の人たちも住み込みで働いていたので、家族を含めた大所帯の食卓を大高さんの母親が支えていました。当時の食卓では、根菜などを豆味噌ベースのつゆで炊いた「煮みそ」などが定番で、お祭りの時などはかんぴょうやしいたけ、桜でんぶ、錦糸卵を使った「箱寿司」も食卓に上がっていましたね。この「砂肝の煮付け」もまた母親から受け継いだ思い出の料理の一つなんです。母が作っていた『砂肝の煮付け』が美味しくて、思い出しながら作っています。

お母様は残念ながら若くして亡くなってしまったとのこと。昔の思い出を懐かしそうに話す大高さんの微笑みがなんとも印象的でした。

「職人めし」レシピ

おふくろの味 砂肝の煮付け

材料

材料分量備考
砂肝150g
キンカン(鶏の未熟卵)200g
しょうゆ50ml
砂糖大さじ1
みりん大さじ4
しょうが1片
にんにく1片

作り方

手順調理内容
1砂肝は薄切り、しょうがとにんにくは千切りにする
2キンカンは玉の部分とひもの部分に分ける
3砂肝とキンカンのひもの部分を下茹でし、ザルにあげる
4鍋にすべての材料と、具材が浸るくらいの水を加え、約10分煮込む
5火を消した後、自然に冷めるまで置いておき、味を染み込ませる

今回の職人

職人データファイル:015

大高一晃さん

三晃堂表具店

愛知県岡崎市/表具師

京都にある老舗表具店で6年間修行をし、家業を継いだ「三晃堂表具店」の三代目表具職人。

 

次回予告

日本の伝統文化に携わる職人に、その仕事に対する想いとこだわりのレシピをインタビューするメディア「職人めし」。次回の職人は「現代の名工」にも選ばれた石工職人、谷本雅一さん。

ぜひ次回の記事もお楽しみに!

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