女性和傘職人が語る和傘の魅力とレストランの味を再現した感動料理とは

仕事やモノづくりへのこだわりと同じく、食にも独自のこだわりを持つ職人をフィーチャーする「職人めし」。

第23回目の今回は、岐阜県岐阜市の「仐日和」の河合幹子さんに、和傘づくりの難しさや喜びのお話と、こだわりの料理についてお話を伺いました。

一般企業に就職するも縁あって和傘職人の道へ

和傘の部品や和紙を仕入れて組み立てから完成までを行っている和傘職人の河合さん。

どのようにして和傘に出会いどのようにして和傘職人の道をたどっていったのでしょうか。河合さんの人生を紐解いていくと、和傘職人への道のりは決して平坦ではなかったことが分かりました。

河合さんと和傘の出会いは幼少の頃まで遡ります。

河合さん 母方の実家が和傘問屋で、祖母や叔父も和傘職人だったので小さいころから和傘というものになじみがありました。夏休みなどの長期休みとか土日は毎日和傘の工房に遊びに行き、職人さんの手つきや祖母が作っている様子をみてたんです。

幼少から和傘を作る職人さんたちの姿をみて育ち、そして和傘職人の一人であるお祖母さまは憧れの存在であったそうです。

河合さんは、大学卒業後に東京の広告会社へ就職します。その後、岐阜に戻り税理士事務所で働いていた時、和傘職人の道に進む転機が訪れました。

河合さん 税理士事務所で働いている時に和傘問屋をやっていた叔父が「人手が足りないから手伝ってほしい」と声をかけてくれたんです。
小さいころから和傘にはなじみがあったので、少しでも力になれるならっていうことで税理士事務所をやめて和傘の世界に入りました。

しかし、その後お母さまの病気がきっかけで叔父の和傘問屋をやめることに。

河合さん 和傘職人になった後、1年くらい叔父の会社で働いていました。けれど母が病気になり、今度は父と母の新聞販売店を手伝わなければならなくなったんです。なので叔父の会社を辞めて新聞の配達や集金を行っていました。
その後母の体調が回復して、朝は仕事を手伝ってほしいけど、昼以降は手伝わなくてもよいという状態になりました。それなら空いた時間でせっかく覚えた和傘作りを始めようというのが、仐日和を始めることになったきっかけです。

やむを得ない事情がありながらも、再び傘を作るようになったという河合さん。新聞配達の仕事をしながら空いた時間で傘づくりをするという多忙な日々を送っていたそうです。

その後、新聞店が安定したこともあり、河合さんは和傘づくりに専念します。

憂鬱だった雨の日を楽しみに変える傘

そんな河合さんに和傘作りの仕事の大変さを伺いました。

河合さん 完成した和傘をぱっと開くととても華やかですが、作る過程はかなり地味でコツコツ同じ作業を繰り返すということが多いです。気を抜かないように根気強く同じ作業を続けるのはすごく難しいです。和傘づくりは積み木のように工程一つ一つを丁寧に積み重ねていかないと、バランスが悪くなり崩れてしまいます。小さなミスでそれまで積み重ねてきたものが全て無駄になってしまう事もあります。周りからは「仕事が楽しそうでいいね」とか「好きなことを仕事にできていいね」って言われたりしますが決してそういうわけではありません。制作するのはとても大変です。

完成品の華やかさとは裏腹に、作る工程は地味で少しでも間違うと完成品の質に影響が出るほど繊細で難しいという和傘づくり。このように大変な思いもありながらも、仕事をする中で感じる喜びもあるそうです。

河合さん 和傘は制作工程の後半にならないと、出来の良し悪しが分かりません。それまではずっとドキドキしながら作業を進めるので、良い出来だと分かると、とてもうれしいですし、何よりほっとします。逆に出来が良くないときはかなり落ち込みます。
和傘の販売店の方から、私の和傘を買ってくださったお客様の感想を聞くと和傘を作っていてよかったと強く感じます。納品の時に偶然仐日和の和傘を使ってくださっているお客さまを見た時は本当にうれしかったです。

河合さんのもとに届いたお客様の声には「いままで雨の日が憂鬱だったけど、和傘を買って雨の日が楽しみになりました」というとても嬉しい感想もあったそうです。

そんな河合さんには仕事をする上で大切にしていることがふたつあるそうです。

ひとつめは1本1本大切に作ること。仐日和にとっては10~20本の中の1本であっても、お客さまにとっては1本しかない大事な和傘であることを忘れないようにしているそうです。

ふたつめは作品ではなく商品を作ること。独りよがりにこだわって作品として和傘を制作するのではなく、日々の暮らしの中で使ってもらえるよう丹精込めて和傘作りをしているそうです。

目でも耳でも雨を楽しめる

雨の日を楽しみに変えるほどのパワーがある和傘。いったいどのようなところに魅力があるのでしょうか。河合さんは次のように話します。

河合さん ひとつめは和紙の美しさです。和傘は和紙に油をひいて防水加工をしているんですが、そうすると和紙に透明感が出ます。透けた和紙を光にかざすと、その和紙の美しさや色味をダイレクトに伝わってきます。
 ふたつめは雨音です。洋傘と違い、雨粒が和紙を叩く心地よい音がします。目でも耳でも楽しめるのが和傘の良いところだと思います。
 日傘は和紙が日差しをやわらかくしてくれるし、もちろん和紙の美しさも感じられます。二重張という特殊な張り方をしている日傘は、外側から見た様子と内側から見た様子が全然違うので、様々な表情を楽しんでいただけると思います。

いつもそばにあった和傘をこの先も作り続けたい

自身のブランド『仐日和』を立ち上げて6年目となる河合さん。今後の未来どうなっていきたいかを伺いました。

河合さん 自分のことでいうと、和傘の品質を高めつつ、もっと多くの傘を作れるようになりたいです。月15本作っているのを月20本、25本作れるようになっていきたいです。
年々、自分の中で和傘の品質の基準が高くなってきているんです。昔の基準で100点だった傘でも、今の基準では80点だと感じるようになりました。これからも少しずつ確実に品質の基準を上げていきたいです。
そのためにも1本の和傘を作る過程でなるべく多くの経験値を得られるように心掛けています。同じ失敗をしないように記録を残し、検証して次に活かしています。

和傘の量と質を高めるために、まだまだ成長したいという河合さん。職人となった今でも、失敗することがあれば、その原因を分析して改善するようにしているというストイックな姿勢にとても驚きました。

また、河合さんは岐阜和傘というの伝統工芸の今後について次のようにおっしゃっています。

河合さん 岐阜和傘は職人さんが減って、和傘の部品職人さんの後継者も見つからないという状況だったので、岐阜和傘がなくならないような活動を行っています。
和傘職人の祖母に憧れていたので、私が祖母の歳になっても岐阜和傘を作っていられるようにしていきたいです。

最後に河合さんにとって和傘とはどんなものか伺いました。

河合さん いつもそばにある、私の生活の核のような存在です。 幼いころから当たり前にあった岐阜和傘の存在を守り、そして憧れの祖母のように和傘を作り続けたいと話す河合さん。その姿はお祖母さまから受け継いだ職人魂が宿っているようでした。

調味料が決め手!レストランの味を再現した感動料理

そんな河合さんに元気が出る「職人めし」を聞くと、嬉しそうに語っていただきました。

河合さん 一番凝っているのがアラビアータパスタに赤山椒をかける事です。すごいおいしいです。この料理が初めてレストランで食べた時にとても感動して、試しに自宅で作ってみたらおいしく再現できました。休みの日などによく作っています。

赤山椒は香りが豊かでおすすめです。アラビアータだけではなく、焼きそばや野菜炒め、鍋料理など、何にかけてもおいしくなります。青山椒に比べて辛みも少なく、使いやすくて万能です。

また、アラビアータのほかにも、味噌汁を作るこだわりの鍋も紹介してくださいました。いろいろな料理を作る河合さんですが、料理を作る上でこだわっているのは調味料だそうです。

河合さん 調味料は味の土台になるというのを知ってから、塩や醤油、酢など普段の調味料を産地などにこだわって買うようになりました。赤山椒や胡椒、柚子などのスパイスも好きで、料理のアクセントとしてよく使っています。良い調味料は香りや旨みが高く、料理の満足度が大きく変わってきます。

「職人めし」レシピ

材料(2人分)

材料分量備考
パスタ200g
トマト缶400g
鷹の爪(輪切り)適量
にんにく(スライス)一片
少々
オリーブオイル大さじ3

作り方

手順調理内容
1鍋に水2Lに対し塩20gを加え、沸騰させる
2パスタを袋の表記通りに茹でて、ザルに上げておく
3フライパンにオリーブオイルを熱し、にんにくと鷹の爪を炒め、香りを移す
4トマト缶を加えて、ひと煮立ちしたら塩で味を調える
5②のパスタを投入し、和える
6お皿に盛り、赤山椒を振って完成

今回の職人

職人データファイル:023

河合幹子さん

仐日和(かさびより)

岐阜県岐阜市/和傘職人

大学卒業後、東京の広告会社に就職。その後、岐阜に戻り税理士事務所に転職。在職中に、叔父である老舗和傘問屋「坂井田永吉店」三代目から声をかけられ和傘職人となる。そして平成28年、自身のブランド『仐日和』を立ち上げる。

http://kasabiyori.com/

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